管理不全空き家に指定されると庭木だけで固定資産税が6倍になる?実家の庭木を放置した人に届く「指導」の中身と、年2回の手入れで回避する方法【2026年】
市役所から封書が届いた。中身は「敷地内の樹木の枝が道路にはみ出しており、通行に支障が生じています」。建物はどこも壊れていない。雨漏りもない。実家に最後に帰ったのは3年前だった。
管理不全空き家の指導は、建物が傷んでいなくても来ます。改正空家法のガイドラインでは、立木の繁茂・枝のはみ出し・倒木のおそれが、それ単独で「管理不全」の判断要素になっているからです。庭木は年に1〜2m伸びます。3年放置すれば、それだけで指導の対象です。
この記事では、勧告で固定資産税が最大6倍になる仕組み、庭木のどの状態が問題になるか、指導が来てから何をすればいいか、そして年に何回・いくらの手入れで回避できるかを整理します。
管理不全空き家とは何か——「勧告」を受けた翌年から土地の税金が最大6倍になる
特定空家っていうのは聞いたことがあるんですが、管理不全空き家って別物なんですか?
別物です。2023年12月の改正空家法で新設された、特定空家の「一歩手前」の区分です。特定空家より軽い状態でも指導の対象になり、勧告まで進めば固定資産税の優遇が外れます。
改正前は、倒壊のおそれがあるような「特定空家」に指定されないと、固定資産税の優遇(住宅用地特例)は外れませんでした。改正後は「このまま放置すれば特定空家になるおそれがある」段階=管理不全空家等でも、勧告を受けると特例が解除されます。
指導から税金6倍までの流れ
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| ①指導 | 市町村から「改善してください」の通知。期限付きで具体的な改善内容が示される |
| ②勧告 | 指導に従わない場合。書面で勧告される |
| ③住宅用地特例の解除 | 勧告を受けた翌年の1月1日時点で改善されていなければ、翌年度から土地の固定資産税・都市計画税が特例なしになる |
住宅用地特例は、200㎡までの土地の固定資産税を1/6に軽減する制度です。これが外れると、土地の税額は最大6倍になります。勧告が撤回されれば翌年度から特例は復活しますが、いったん上がった年度分は戻りません。
参考: 国土交通省 改正空家法の概要、仙台市 勧告がなされた管理不全空家等の固定資産税について
数字で見ると重さが分かります。土地の評価額が1,500万円なら、特例ありの固定資産税は年約35,000円。特例が外れると年約210,000円です。差額の175,000円は、業者に年2回剪定を頼んでもお釣りが来る金額です。
庭木の「何」が管理不全と判断されるのか
建物は無事なのに、庭木だけで指導が来るなんてことが本当にあるんですか?
あります。国のガイドラインには「立木竹」の項目が独立して置かれています。建物と関係なく、庭木の状態だけで管理不全と判断できる建て付けです。
国土交通省のガイドラインでは、管理不全空家等の判断要素として、建築物の傾きや屋根材の脱落と並んで、立木の枝のはみ出し・繁茂・枯損が挙げられています。庭木に関して指導対象になりやすい状態を整理します。
指導の対象になりやすい庭木の状態
| 状態 | 具体例 | 危険度 |
|---|---|---|
| 枝が道路・隣地にはみ出している | 歩道に垂れて通行の妨げ、電線に接触、隣家の屋根に乗っている | 高。最も多い指導理由 |
| 倒木・枝折れのおそれ | 幹が傾いている、枯れ枝が道路側に張り出している、根元が浮いている | 高。台風前に指導が集中する |
| 害虫・落ち葉の発生源になっている | 毛虫の大量発生、隣家の雨樋に落ち葉が詰まる | 中。近隣からの苦情で発覚 |
| 見通しを妨げている | 交差点や出入口の視界を塞いでいる | 中 |
| 敷地全体が藪化している | 雑草と庭木が一体化し、不法投棄・動物の住処になっている | 中。防犯上の理由で指導 |
「建物は大丈夫」は安心材料になりません。指導の起点は多くの場合、近隣住民からの通報です。通報される理由の第1位は、道路にはみ出した枝です。
参考: 国土交通省 管理不全空家等及び特定空家等に対する措置に関するガイドライン
・悩み: 父が亡くなって相続した実家。売るか壊すか決められないまま2年経ち、市から「樹木が道路にはみ出している」と通知が来た。建物は無事なので油断していた。 ・決め手: 通知に「期限までに改善し報告」とあり、遠方から自分ではどうにもできないので、写真で見積もりを出してくれる業者に依頼した。 ・結果: 道路側の枝の切り戻しと枯れ枝の撤去で48,000円。作業後の写真を市に送って、指導は終了した。 出典参考: Yahoo!知恵袋「空き家 庭木 苦情」
指導が来てから勧告までに何をすればいいか
通知が来たら、もう手遅れなんですか?
指導の段階なら手遅れではありません。指導は「改善してください」のお願いです。期限内に改善して報告すれば、勧告には進みません。逆に、通知を放置することが一番危険です。
指導通知には、改善すべき内容と期限が書かれています。対応の順序は次の通りです。
①通知の内容を確認し、担当課に連絡する
まず市町村の空き家担当課に電話してください。「どの木のどの部分が問題なのか」「どこまでやれば改善と認めてもらえるか」を確認します。担当者は具体的に教えてくれます。連絡するだけで「対応する意思がある所有者」と認識され、勧告への移行は遠のきます。
②期限内に改善する
指導内容の多くは「はみ出した枝の切除」「枯れ枝・危険木の撤去」です。自分で帰省して対応できないなら、業者に依頼します。期限に間に合わないときは、担当課に事情を伝えて期限の相談をしてください。黙って過ぎるのが最悪です。
③改善後の写真を送って報告する
作業前と作業後の写真を担当課に送ります。業者に依頼する場合は「市への報告用に作業前後の写真をください」と伝えておくと確実です。
④再発防止の見通しを伝える
「今後は年2回、業者に定期的に手入れを依頼する」と伝えると、担当課の心証は大きく変わります。管理不全の判断は「放置されているかどうか」なので、管理の仕組みがあることを示すのが効きます。
指導の段階で対応した場合、費用は数万円で済みます。勧告まで進んで特例が外れると、年に十数万円単位の税負担が上がったうえで、結局手入れは必要になります。通知が来た週に業者へ連絡するのが、金額的にも一番安い対応です。
回避に必要な手入れの頻度と費用——年1回・年2回・伐採で比べる
どれくらいの頻度で手入れすれば、指導が来ないで済みますか?
道路や隣地に面した木があるなら年2回が目安です。年1回だと、伸びの早い木は夏に道路へ出ます。木の数が多くて管理しきれないなら、伐採して本数を減らすのも正当な選択です。
3つの管理方法の年間費用目安
| 方法 | 内容 | 年間費用の目安 | 向いている人 |
|---|---|---|---|
| 年1回の強剪定 | 冬に道路・隣地側を大きく切り戻す | 30,000〜80,000円 | 木が少ない、伸びが遅い樹種 |
| 年2回の定期剪定 | 初夏と冬に整える。はみ出しをつくらない | 50,000〜150,000円 | 道路・隣地に面した木がある |
| 伐採で本数を減らす | 管理できない木を切り、残す木だけ年1回 | 初年度80,000〜300,000円、翌年以降20,000〜50,000円 | 売却・解体の予定が立たない、遠方で帰れない |
費用は木の高さと本数で変わります。庭木1本あたりの剪定相場は3m未満で3,000〜6,000円、3〜5mで6,000〜15,000円、5m以上は15,000円〜が目安です。伐採は高さ3〜5mで15,000〜30,000円、処分費が別途かかります。詳細は庭木剪定の費用相場と庭木伐採の費用相場を参照してください。
「伐採して終わらせる」が合理的なケース
- 売却も解体も1〜2年は決められない
- 庭木が5本以上あり、毎回の剪定費が10万円を超える
- 高さ5m超の木が道路・隣地に面している
- 今後も年に1回以上帰省できる見込みがない
思い出のある木を切る抵抗はあると思います。ただ、管理不全の判断基準は「今後も適切に管理されるか」です。管理できない本数を抱えたまま毎年指導を受けるより、管理できる本数まで減らすほうが、結果的に残した木を守ることになります。
・悩み: 母の実家を相続。庭に7本の木があり、年1回帰って自分で剪定していたが、60代になって脚立作業がつらくなり2年空いた。隣家から「枝が屋根に乗っている」と直接連絡が来た。 ・決め手: 隣家に面した高さ6mの木2本を伐採し、残り5本を業者に年2回の定期剪定で依頼することにした。 ・結果: 伐採と処分で126,000円、定期剪定は年2回で68,000円。隣家に業者から挨拶してもらい、関係も戻った。市への通報には至らなかった。 出典参考: ミツモア 庭木剪定の相談事例
遠方から手入れを回す3つの方法
実家まで片道4時間なんです。毎回帰るのは無理で……。
帰らなくても管理は回せます。定期契約の業者、シルバー人材センター、そして本数を減らす伐採。この3つを組み合わせるのが現実的です。
①業者と定期契約する
年2回の訪問日を決めて、作業前後の写真を送ってもらう契約です。立ち会い不要で対応する業者は多く、鍵も不要(庭のみの作業)なケースが大半です。近隣への挨拶も業者に任せられます。遠方の所有者にとって最も手間がかからない方法です。
②シルバー人材センターに依頼する
費用は業者より安い傾向があります。ただし、高所作業(脚立の上・2m超)を受けない、樹種によって断る、繁忙期は数ヶ月待ちといった制約が地域ごとにあります。低木・生垣の手入れには向いていますが、道路にはみ出した高木の対応は業者になることが多い点に注意してください。
③伐採で管理対象を減らす
前の章で書いた通りです。管理する木を減らせば、①②の費用も下がります。
遠方管理で失敗しやすいポイント
- 「帰ったときにやる」を続ける:帰省の間隔が空くほど木は伸び、1回の作業量と費用が増える
- 近所の人に頼む:善意に甘えた結果、事故やトラブルの責任問題になる
- 通知の転送設定をしていない:実家宛ての市からの通知に気づかず、勧告まで進む。市役所に送付先を現住所へ変更する届出をしておく
業者に依頼するときに伝えるべき4つのこと
業者に頼むとき、普通の剪定と何か違いはありますか?
「管理不全の指導が来ている」と最初に伝えてください。そうすると業者は、市への報告を意識した作業と記録をしてくれます。普通の剪定とは目的が違います。
①指導通知の内容を共有する
通知の写しを業者に見せてください。「道路側の枝」「枯れ枝」など指導の対象が明確になり、無駄な作業を省けます。
②作業前後の写真を依頼する
市への改善報告に使います。道路側から撮った写真が特に重要です。
③近隣への挨拶を依頼する
作業音と枝の落下があります。隣家に一声かけてもらうだけで、通報者との関係が改善することもあります。
④今後の定期管理を相談する
「年2回で見積もりをください」と伝えると、単発より安い定期料金を提示する業者が多くあります。市への「今後の管理方針」の説明にも使えます。
見積もりを比べるときは、庭木剪定の費用相場の「総額で見る」考え方を参考にしてください。処分費が含まれているかで金額は大きく変わります。
まとめ
- 管理不全空き家は2023年12月の改正空家法で新設された区分。建物が無事でも、庭木の繁茂・枝のはみ出し・倒木のおそれだけで指導の対象になる
- 勧告を受けると翌年度から住宅用地特例が外れ、土地の固定資産税が最大6倍になる
- 指導の起点は近隣からの通報が多く、理由の第1位は道路にはみ出した枝
- 指導が来たら、担当課に連絡→期限内に改善→写真で報告→今後の管理方針を伝える。放置が最悪
- 道路・隣地に面した木があるなら年2回の手入れが目安。年間5〜15万円
- 管理しきれない本数なら、伐採で減らして残す木を守る判断も正当
- 遠方からは、定期契約の業者・シルバー人材センター・伐採の組み合わせで回す
- 業者には「指導が来ている」と最初に伝え、前後の写真・近隣挨拶・定期見積もりを依頼する
実家の庭木は、放置した年数のぶんだけ費用と手間が増えます。通知が来た週に動けば数万円で終わる話が、勧告まで進めば毎年の税負担に変わります。まずは市の担当課と業者への連絡を、今週中に済ませてください。